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天空に一番近い木

執筆者の写真: Naoko MollerNaoko Moller

私の住む、北カリフォルニア、ハンボルト郡はコースト(沿岸性)レッドウッド杉の原生林が残る地域です。ハンボルト・レッドウッド・国立州立公園として、世界最大の広さを誇っていて、1980年にユネスコ世界遺産(自然遺産)として登録されました。



恐竜が歩き回っていた中世代ジュラ期、約2億年前から、このレッドウッドの林は生き続けてきました。現在、世界一高い木はハンボルトにあり、樹齢2000年以上のもので、「ハイペリオン」(115.92m)と名付けられています。





しかし、森林の多くは大手の製材会社の手にはいり、森林伐採で樹齢1000年、2000年の木々がどんどんと伐採されていったのです。


レッドウッドは材木として19世紀半ば頃に多くが伐採され、今残っているのはわずか4%となっています。

この伐採を阻止し、森を守ろうという運動は地元の人たちから発信され始まりました。1980年から十数年かけて、抗議運動が盛んになり、やがて州が材木会社から土地を買収し今の形の保護区となりました。




この運動の初期に、夫、ジェイは新米でありながら主任弁護士として森林保護運動をサポートしました。

ある時、1000人以上の人たちが材木会社所有地に無断侵入したと逮捕された事件では、1000人の釈放へ向けて立ち上がったといいます。


もちろんこれは、第二審の控訴裁判で勝訴となりました。

私有地だった森は国に買い取られ、州立公園の一部となりました。


コーストレッドウッドはスギ科(またはヒノキ科)の針葉樹です。アメリカ・オレゴン州南西部からカリフォルニア州中部までの海岸線近くの南北約700km、東西約40kmの細長いベルト状の地域に生息しています。



これらの公園区域には延長が53キロメートルにも及ぶ沿岸地域、コ ーストレッドウッド林(世界には、レッドウッドと呼ばれる樹木が3種類(コーストレッドウッド(Coast Redwood)、ジャイアン トセコイア(Giant Sequoia)、メタセコイア(Dawn Redwood))あります。そのため、この北カリフォルニアの海岸沿いに分布し ているレッドウッドを、他の2種から区別して「コーストレッドウッド」と呼びます。)


’Burl’ ブーロ。木にできるコブ。コブの中は木の節でいっぱいです。

この部分を利用してテーブルや、器なども作られる。


集団としてのレッドウッドの森は、その高い梢で海からの風を捕らえ、局所季候の霧雨を作り出して自分達の水分を確保しています。そして、その水分を根元に振りまくのです。

自分たちで自分たち用の雨を降らせるのですね。



倒木や雪で地面に着いた枝がそのままそこから木として成長を始めることをいいます。

レッドウッドの森林では、倒れた木々もそのままにし、森は生き続けるのです。


トマトの種ほどの大き さしかない種子からも繁殖できますが、種子の発芽能力は高くありません。コーストレッドウッドの 幹の基部から萌芽する能力は、針葉樹としては珍しいものです。



これは、木の幹からでたレッドウッドの子供ですが、アルビノです。写真より実物は白っぽく光っていました。世界中で発見されたの5箇所。そして、ここはその一つです。





コー ストレッドウッドは、理想的な生育条件の揃っているカリフォルニア海岸に沿ってのみ生育していま す。この理想的条件とは、1年を通して雨または霧がでていること、及び温暖な気候です。コースト レッドウッドは、干ばつや極端な気温変化を好みません。また、この大木にはほとんど天敵がいませ ん。





タンニンが多いレッドウッド。この木の樹皮と、木の内部の色(製材した板など)が赤いことからレッドウッドと呼ぶようになりました。 タンニンは木の幹は菌や虫などの耐性が強く、住宅建材に適しているといわれています。成木したレッドウッドの樹皮の厚さは30センチにも達することもあり、間隙が多く、ここもタンニンを含む構造で、山火事の時も幹まで熱を通さないため、生き残る木が多くあります。



小道のようにみえるのは、倒れたまま、朽ちて、大地にもどる過程のおおきなレッドウッド。そして、この朽ちた木は他の植物の温床となっていきます。レッドウッドでまず育っていく、着生植物はシダ類です。それから、苔や様々な植物の住みかとなっていくのです。




レッドウッドは水の近くに自生します。

コーストレッドウッドは地下に浅く広く張った根で大量の水をくみ上げ、一日に1900リットルもの水を発散させるといわれています。霧の多いカリフォルニアの海岸近くの地域の気候の中でこそ育つのですね。


水は根っこからだけではなく、空気中の水分を一本一本の針から吸水しているといわれています。

現在では原生林の伐採は厳しく制限されています。



公園の緑がこれほど豊かなのには理由があります。


ここハンボルトは年間降水量(通常は10月から4月まで降る)は平均152~203cmと雨の多いところなのです。


サンフランシスコから北へ、沿岸を通る国道101号線はそんな原生林の中を通っていて、

それは 国道と並行してAvenue of the Giants, 巨人の道、と呼ばれ、50キロ近く続きます。その先は国道101号線に合流し、先はオレゴン州まで続いています。


レッドウッドの森の中へ入ると、カリフォルニアのお日様も届かない

ひっそり、しっとりとした空気とふかふかの大地に出会います。

木の精霊が隠れているような気にさえなります。



恐竜の時代から、未だに、天に向かって伸びている世界一高いレッドウッド。

人によって壊された森は今、人によって再生に向かっています。

紆余曲折を経て、静かにこの地を守り、豊かにしてきたレッドウッドにぜひ、会いに来てください。







参考文献:

http://karapaia.com/archives/52210865.html

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